「不妊治療専門医が解説する最新の不妊領域の治療と情報」
春木レディースクリニック院長
春木 篤 先生
春木レディースクリニック院長
春木 篤 先生
オンラインで開催された第54回子宝カウンセラーの会で春木レディースクリニック院長春木篤先生の最新の不妊治療について勉強しました。
最新の不妊治療として、卵管鏡下卵管形成術(FT)、培養装置EmbryoScope、胚評価-iDAScore、新規原因分子を標的にした抗リン脂質抗体症候群(APS)抗体検査を学びました。
良い胚芽を得るための工夫として顆粒膜細胞の重要性も学びました。顆粒膜細胞の質を高める漢方薬もございます。詳しくは漢方相談スガヌマ薬局漢方薬剤師までお尋ねください。
〇卵管鏡下卵管形成術(FT)
春木レディースクリニックでは、開院以来約2000件のFT手術を実施し、7000件以上が術後半年以内に妊娠している。
【FTが望ましい症例】
①HSG上、近位端の閉塞・狭窄症例
②不妊期間が長い症例
③第二子以降の不妊症例
④卵管因子以外に特定の原因が無い症例
⑤子宮内膜症が無い症例
〇Embryoscope
当院では2021年3月の移転に伴い、新しくEmbryoScopePlusを導入しました。
EmbryoScopePlusとは顕微鏡とカメラ及び解析ソフトが搭載されたインキュベーター(培養器)のことです。
EmbryoScopePlusでは胚の成長の様子を自動的に撮影し、撮影された画像を繋げることでタイムプラス画像として動画のように観察することができます。
このことにより、胚を培養器外に取り出して胚を外気のストレス(温度、酸素濃度、PHの変化や光への暴路)に曝することなく受精の有無や分割の様子を細かく調べることができ、治療成績向上が期待されます。
さらに、自動的な連続撮影により、従来の定点観察では得られなかった胚の詳細な状況までも確認でき、より妊娠しやすい胚の選別が可能となりました。
〇最新の胚評価-iDAScore
iDAScoreとは
AI(人工知能)を用いて開発したシステムが自動的に胚を評価し、点数化したもの
(つまり、iDAScoreの点数が高い胚ほど継続妊娠の可能性が高い)
そのAIの学習データは115,000個以上の胚のタイムプラス画像分析に基づいており、iDAScoreは着床の可能性に関わる胚の特徴を即座に識別し、順位付けする優れたツールであり、iDAScoreによって得られるスコアは経験豊富な胚培養士の判断とよく一致し、経験レベルに影響されることなく胚の優先順位付けを行うことが可能です。
〇新規原因分子を標的にした抗リン脂質抗体症候群(APS)抗体検査
・APSの検査方法比較
・β2GPI抗体:プレートに固相化:β2GPI単独
・カルジオリピン抗体:PL:β2GPI/リン脂質複合体
・β2GPIネオセルフ抗体:HLA-DR:β2GPI/HLA-DR複合体
・ネオセルフ抗原を応用したAPSの診断
*ネオセルフ抗体検査法
患者血清中の自己抗体β2GPI/HLA-DR複合体に対する自己抗体の有無を調べる検査
・不育症におけるネオセルフ抗体
不育症患者は日本で推計140万人、新規患者4~6万人/年。半数以上の患者は原因不明であり、治療法の選択が難しいです。
ネオセルフ抗体検査は新規原因分子(β2GPI/HLA-DR)を検出できる検査方法であり、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)での臨床研究を実施中です。臨床研究において、原因不明の不育症女性の20%で陽性となっています。
原因不明の不育症患者の20%を捉えることができ、かつAPS患者の84%をカバーできることから、スクリーニング検査または選択的検査としても使用可能です。
〇良い胚芽を得るための工夫
出産年齢の高齢化に伴い、女性の卵巣機能は徐々に低下するが、体外受精治療の成功は質の高い卵子と精子に依存しており、有効的な卵胞発育が必要です。
→低卵巣反応(poor ovarian response,POR)は、排卵誘発時に性腺刺激ホルモンに対する卵巣反応が刺激されにくい病理学的状態であり、性腺刺激ホルモンの使用量は多いが、成熟卵胞の数が少なく、E2レベルが低く、最終的に 体外受精の妊娠成績が悪くなります。
〇顆粒膜細胞は卵母細胞を成熟させる
顆粒膜細胞の増加に伴いより多く分泌されるエストロゲンは卵胞細胞の成長(成熟)と発達を助けます。顆粒膜細胞はとても妊娠において重要です。
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