こんにちは、平成29年9月24日から9月26日まで中国の南京中医薬大学病院に最先端の不妊治療、子宮内膜症などの婦人科の漢方治療の勉強に行ってまいりました。
西洋の病院の治療と東洋の漢方の治療を融合させた最近の中国の不妊漢方治療はとてもすばらしいです。
周期療法の中国第1人者の夏桂成先生の外来診察の見学や講義などを受けてきました。
夏先生は、中国で最高の医師の称号である国医大師を受賞されています。
夏先生の診察は、患者さんに厳しい感じではなく時折笑いもある診察でした。
基本の考え方は、心腎子宮学説です。
漢方で言う腎(腎臓というより生命エネルギーの基本、アンチエイジングとしての腎)と心(心臓ではなく安心の心、つまり心の平穏)が子宮(子宮環境の改善)にとても重要であると考えられていました。
考え方の基本は、漢方の腎(補腎、アンチエイジング)、血(気血)、心(安心の心)の3つを中心に、その人に応じて、湿(しつ)(痰湿、体にとって余分な水や脂肪)や脾胃(ひい)(胃腸の調子、消化吸収)、瘀血(おけつ)(血液の循環)を整えて、妊娠しやすい体の環境を整える方法です。
今回の診察では、12名の不妊症の患者さんの診察を見学することができました。
夏先生はお客様の舌をみて脈をとり、体質を確認しながら問診されていました。
すべてのお客様に問診されていた内容は
1.おしりが冷えていますか?
2.おなかが冷えていますか?
3.(排卵期の)おりものはでていますか?
4.夢はみますか?(ストレスはありますか?)
5.10時に寝てますか?(睡眠を十分とっていますか?)
ということをお話されていました。
そして、該当する患者さんに
1.おしりが冷えないようにしましょう。冷えがきついなら体を温めるような漢方薬を多くします。
2.おなかが冷えないようにしましょう。脂肪がたまっているとおなかが冷えやすいのでダイエットしましょう。湿(漢方でいう余分な水分や脂肪)が多いなら漢方薬も調整します。
3.おりものがでているなら排卵しているから大丈夫です。でていないならでるように漢方薬を調整します。
4.多夢(夢が多い)と睡眠が浅いです。睡眠の質を上げる漢方薬を出しておきます。ストレスをへらしましょう。
5.10時に寝ましょう。睡眠は大切ですよ。
などと漢方薬の説明と一緒に、生活改善指導もお話されていてとても勉強になりました。
私もこれからもよりいっそう生活改善指導をがんばろうと思いました。
この夏先生の問診と処方内容を確認できたことが、中国から帰ってきてからの問診と漢方薬を決める上でとても役にたっています。
「中医大師の夏先生も冷えのきつい患者さんにはこういう漢方薬を処方してました。
お客様にもこの冷えの漢方薬を追加しましょう」とお話すると、患者さんも素直に漢方薬を飲んでくださいます。患者さんへの信頼度が増したようにも思います。
2週間たって変更したお客様から、早速冷えの感じが違ってきた、今回の生理通は楽になったとお聞きすると、ますます自信が深まりました。
夏先生は、補腎をもっとも大切にしていて、亀板を多く使っていました。
私達の漢方処方でも亀板(亀鹿仙(きろくせん))を多く使って妊娠率をあげていこうと思いました。
夏先生は、心(安心、心の安定、睡眠の質の向上)の漢方薬も多く使っていました。
不妊で悩むお客様はストレスを多くかかえている方が多いです。
不安な気持ちは、妊娠しにくくします。改善する漢方薬も多く使って、お客様の気持ちを楽にしていこうとも思いました。
夏先生は、不妊治療の西洋の検査結果・治療(FSHやLHなどホルモン検査、卵管造影、体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)など)と東洋の漢方の検査・治療(問診、舌診、脈診、望診、漢方薬、鍼灸など)を早くから両方利用して妊娠・出産数を増やしています。
私達スガヌマ薬局の不妊漢方薬も夏先生の考え方を基本に漢方薬をお渡ししています。
西洋の病院の検査結果を基に漢方処方を決めたり、体外受精や顕微授精の受精率をあげるために漢方薬を使うということも夏先生の考え方にもとづいています。
スガヌマ薬局は今年も多くの不妊で悩むお客様のご懐妊、ご出産をいただいています。
男性不妊の方、病院にかよっているけどなかなか妊娠しない方、35歳以上の方(当薬局では48歳の方のご出産例もございます)、あきらめずにご相談ください。
今後も不妊で悩むお客様のために、今回学んだことをいかしてがんばります。
不妊治療の診察の見学の他に、中医師による講義も受けました。下記は、講義内容を箇条書きにしています。ご参考にしてください。不明な点は、店頭にてお尋ねください。
〇体外受精の繰り返しの失敗への中医学的対応
・夏桂成先生は心腎子宮学説を唱えられています。
・繰り返しの胚移植の失敗への対応
定義 良質の杯移植を3回以上失敗(卵巣衰退をのぞく)
・中国では一回に胚移植は2回がスタンダードだが、これからは1個戻しがスタンダードになる。
・肺移植の失敗の原因となる婦人科疾患
子宮の出血、PCOS、子宮内膜症、胚の品質低下、着床能力低下
・病気の治療と同時に人の気持ちの治療も必要
・卵子の老化による染色体異常も失敗の大きな原因
中医学の考え方では35歳から老化が始まり、40歳から卵子の反応が悪くなる。
染色体異常がおきると失敗しやすくなる
・子宮内膜受容性
受精卵が子宮内膜の場所をきめる能力と内膜への粘着の能力を合わせて子宮内膜の受容性という。排卵後6から8日がもっともよい状態になる。
・検子宮鏡検査
ポリープ、形の変性、内膜の状態を検査する
・西洋的には原因がわからない時は中医学的に観察する
例 脾腎不足(ひじんふそく)虚証(きょしょう)、心火旺(しんかおう)実証(じっしょう)
実際は虚実(きょじつ)が混合している人が多い。
・中医学の観点からみた胚移植の失敗の原因
臓腑弁証(ぞうふべんしょう)から問診する。
睡眠状態の確認が中医学的にはとても大切です。
西洋的には、コーヒーやタバコが問題になる。
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