卵巣予備能低下(Diminished Ovarian Reserve, DOR)
臨床特徴: 35歳以上の女性に多く見られる症状で、以下のような特徴があります。
・月経量の減少
・不妊
・反復する体外受精-胚移植(IVF-ET)の失敗
【40歳以上の場合】
生理的DORが約50%を占め、以下の基準で診断されます。
・卵胞刺激ホルモン(FSH)値が10IU/L以上(4週間間隔で2回連続測定)
・抗ミュラー管ホルモン(AMH)値が1.1ng/ml未満
・超音波検査で卵胞数(AFC)が5〜7個未満(両側卵巣)
・IVF-ETにおける卵巣の反応: 排卵刺激時に卵胞数が少ない、または卵子の質が悪いという卵巣低反応(Poor Ovarian Response, POR)が示されます。
【40歳未満の場合】
・FSH値が25IU/L以上は卵巣機能不全(Premature Ovarian Insufficiency, POI)
・FSH値が40IU/L以上は早発卵巣不全(Premature Ovarian Failure, POF)、閉経期間が4ヶ月以上
中医証候
1.腎虚 (じんきょ)
腎虚は、腎の機能が弱まっている状態を指します。
腎は中医学で水の代謝、生殖、成長発育などを司るとされており、腎虚の症状には腰痛、耳鳴り、頻尿、夜尿、性機能の低下などがあります。
2.肝腎陰虚 (かんじんいんきょ)
肝と腎の陰のエネルギーが不足している状態を指し、眩暈、腰痠、耳鳴りなどを主要症状とします。
陰は体を潤し、冷やす作用があるため、陰虚ではのぼせやほてり、乾燥、微熱などが現れます。
3.脾腎陽虚 (ひじんようきょ)
脾と腎の陽のエネルギーが不足している状態を指します。
陽は体を温め、活動的にするエネルギーで、陽虚では消化不良、下痢、冷え性、疲労感などが現れることがあります。
治法
1.補腎填精 (ほじんてんせい)
腎の機能を強化し、精を充実させる治療法です。これにより、腎虚に関連する症状の改善を目指します。
2.益気養血 (えききようけつ)
体の気のエネルギーを増やし、血を養う治療法です。
気血の不足による疲労感、顔色の悪さ、免疫力の低下などを改善することを目的としています。
これらの証候と治法は、体のバランスを整え、全体の健康を促進するための中医学の基本的な概念です。
具体的な治療法は、個々の症状や体質に合わせて選ばれます。
中医学では、患者さん一人ひとりの体質や生活習慣に合わせた漢方処方を致します。
【漢方処方例】
帰腎丸に鹿角膠、阿膠、黄精などを加えたもの
中成薬では滋腎育胎丸、坤泰カプセル、左帰丸、定坤丹、参茸補血丸など
膏方では亀鹿二仙膏
【妊娠成功事例】
26歳の女性患者Bさんのケーススタディをご紹介します。
彼女は10年間不規則な月経と4ヶ月以上の無月経に悩まされ、不妊治療を受けることにしました。
彼女の診断結果は早発卵巣不全で、弁証は腎陰不足でした。
治療法は補腎填精と益気活血でした。
治療の結果、彼女は妊娠に至り、無事出産することができました。
【まとめ】
早発卵巣不全(POI)は、卵巣機能が40歳までに低下し、卵胞の発育が著しく低下する状態を指します。
治療にはホルモン補充療法(HRT)が一般的で、プロゲステロンやエストロゲンの量を増やすことで生理周期を整えることができます。
Bさんのケースでは、腎陰不足に基づく漢方治療法が採用されており、中医学の理論に従って、腎陰を滋養し、生殖軸の機能を促進することを目的とした処方が行われています。
このアプローチは、中医学における腎陰の枯渇と月経不順の関連に基づいており、腎陰が回復すると陰陽のバランスが改善されると考えられています。
治療の結果、Bさんは妊娠に至り、無事出産することができました。
これは、中医学における腎陰不足の治療が、生殖機能に対して有効であったことを示しています。
詳しい漢方処方については、当薬局、漢方薬剤師にお尋ねください。
質問やコメントがあればお気軽にお寄せください。よろしくお願いいたします。
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